No12「熱中症について」
汗をかいたら水を飲もう
 
 日差しが強くなった太陽の下、激しい運動と地面よりの輻射熱によって油断をすると熱中症は襲ってきます。また、高温時閉め切った体育館の中でのスポーツは注意が必要です。バレーボールなどでは1試合で5リットルもの汗が出ると言われており、これは私たち体の中の血液の量に相当します。したがって汗で失った水分を補給しないと脱水症となり、体温が上昇し熱中症を起こし、命取りとなります。しかし、突然死と異なり、病気を知ることによりその発生を予防することが出来ます。 

@熱中症 とは
 私たちの身体は運動をすると大量に熱を発生します。この熱は皮膚へ流れる血液の量を増やしたり、汗を出すことによって体外に放散します。外気温が高く、あるいは湿度が高いとこの熱放散の効率が悪くなり、体温は上昇します。こうした高温環境下において発生する障害を総称して熱中症 と呼んでいます。熱中症と呼ばれる中にはその発生機序と臨床症状から大きく分けて熱疲労、熱痙攣、熱射病等がありますが、実際には重複しての発生が多く、その症状も複合したものが多く見られます。 

@原 因
  原因は前記したように高温環境ですが、その発生条件としては次のものが挙げられます。
1.外的条件)
  @気温や湿度が高い。
  A輻射熱が大きい。
  B風が少ない。
  C換気が不十分。
  D通気不良の衣服。
  2.内的条件)
  @激しすぎる運動。
   A不適当な水分・塩分の摂取。
   B睡眠不足。
   C不摂生な生活。
  D貧血や空腹時。
  E慢性心血管疾患患者。
  F小児・肥満・老人。 

@分類・症状
1.熱疲労
 暑いところで動き回ったとき、熱放散のための皮膚への血流の増加のほか、運動のために筋肉その他の血流増加が加わるため、心臓からの血液排出量が減少して起こる一種の循環失調です。
症状としては

 @軽いショック症状。全身の脱力感、倦怠感が強い。
 A顔面蒼白、血圧低下、脈拍微弱頻数。
 B発汗多量、皮膚湿潤。
 C体温上昇はほとんど無い。
 D頭痛、イライラ、めまい、嘔吐。運動による熱生産、高温環境などにより、これらの症状は打ち消されることが多いようです。

2.熱痙攣
 多量の発汗により体内のNaClが喪失し、水分と電解質のアンバランスを来して起こります症状としては
 特に良く使う手足の筋肉や腹壁の筋肉に、突然激しい痛みを伴う痙攣が起こります。運動中に起こることが多いですが、運動後の休息時や入浴中に起こることもあります。

3.熱射病
 非常に暑いところで、熱放散を汗のみに頼っていて、発汗が不十分になり過熱により脳の温熱中枢が障害され、体温の調節がきかなくなって起こります。重篤のものは死にいたります。 症状としては
 @体温の異常上昇、しばしば  40℃以上の高熱。
 A全身の脱力感、倦怠感が強  い。嘔吐、頻脈。
 B頭痛、イライラ、めまい、  耳鳴り。  
 C発汗停止、皮膚紅潮乾燥。
 D手足の運動障害や視力障害。
 Eわめいたり、痙攣→昏睡状  態。

@応急処置
1.着衣をゆるめます。
2.涼しいところに移して体温を下げます。早くに体温を下げるには、水や濡れタオルをかけて扇ぐ方法、首、腋の下、足の付け根など太い血管のある部分に氷やアイスパックを当てる方法もあります。
3.頭を低くして休ませ、足を高くし、手足を末梢から中心部に向けてマッサージするのも有効です。
4.水又は0.2%食塩水を与えます。熱痙攣では0.9%食塩水を与えます。
5.吐き気や嘔吐などで水分補給が出来ない場合は病院に運び、点滴を受ける必要があります。意識障害は軽いこともありますが、うわ言を言ったり、呼んでも返事をしないなど少しでも意識がおかしい時には重症と考え、救急車をお願いするようにしましょう。 

@予 防
1.知って防ごう熱中症
  無知と無理でおこるので知 って防ぎましょう。病状・  応急処置等知っておいて下さい。 
2.暑いとき、無理な運動は事故のもと
 同じ気温でも湿度が高いと危険性が高くなります。また運動強度が強いほど熱の発生も多くなり、やはり熱中症の危険性は高くなります。暑いところで無理に運動しても効果は上がりません。環境条件に応じた運動、休息、水分補給が必要です。

3.高温環境下での馴化。
  急に暑くなった時には運動を軽減し、暑さに馴れてい くに従い徐々に増やして行くようにしましょう。

4.体重測定の習慣。
 運動による脱水状況の把握のため、運動前後の体重測 定の習慣づけましょう。また、体重の3%の水分が失われると運動能力や体温調節能力が低下しますので、運動前後の体重減少が2%以下に納まるように水分を補給しましょう。 

5.水分・電解質の補給。 
 失われた水分を補給しないと脱水になり、体温調節能力や運動能力が低下します。運動前及び運動中の水分の補給には0.2%程度の食塩水が適当です。 

6.スケスケルックでさわやかに
 暑いときには軽装にし、素 材も吸湿性・通気性の良いものを選びましょう。またやむを得ない場合では、休憩中に衣服をゆるめ、出来るだけ熱を逃がしましょう。

7.身体因子のチェック
  体調が悪いときは体温調節能力が低下します。疲労、発熱、かぜ、下痢など、体調の悪いときには無理に運動をしないようにしましょう。また二日酔い、睡眠不足も同様です。体力のない人、肥満の人、暑さに馴れていない人も暑さに弱いので注意が必要です。  

8.応急処置を早めに行う。
  軽度のものは 
 @衣服をゆるめて、
 A涼しい場所を選び、
 B頭を低くして寝かせ、
 C水分を補給すれば通常は回復します。        

熱 中 症 予 防 の た め の 運 動 指 針

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 湿球温 乾球温     熱中症のための運動指針
〜18℃

 

〜24℃

 

ほぼ安全
適宜
 水分補給
熱中症の危険は小さいが適宜水分の補
給は必要。市民マラソンなどではこの
条件でも熱中症が発生するので注意
18〜

 

24〜

 

注 意
積極的に
 水分補給
死亡事故が発生する可能性がある。
熱中症の兆候に注意するとともに運動
の合間に積極的に水を飲むようにする。
 21〜

 

28〜

 

警 戒
積極的に
   休息
熱中症の危険が増すので、積極的に休
息をとり、水分を補給する。激しい運
動では 30分おきくらいに休息をとる。
 24〜
 
 

 

31〜
 
 

 

厳重警戒
激しい運動
  は中止

 

熱中症の危険が高いので激しい運動や
持久走など熱負荷の大きい運動は避け
る。運動する場合には積極的に休息を
とり水分補給を行う。体力の低いもの
暑さに慣れていないものは運動中止。
 27〜

 

35〜

 

運動中止
運動は
 原則中止
皮膚温より気温の方が高くなる。
特別の場合以外は運動は中止する。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

                    日本体育協会発行「熱中症予防ガイドブック」参照                                                                       

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