「足 特に“前足部”の障害と
外傷について」
 
 足の甲、つま先及び足指の痛みで困っている人は少なくありません。今回はこのような前足部の痛みについて述べてみたいと思います。
図1 前足部の解剖
 
  1.第5中足骨基部骨折(ちゅうそくこつきぶこっせつ)
 スポーツ中や物の上に乗って足を捻ったときによく起こり、足の甲の外側に腫れと痛みが生じます。これは足を大きく内がえしに捻ることにより短腓骨筋(たんひこつきん)という筋肉に第5中足骨が強く引っぱられて起こります。
(図2)
 時には、症状が軽くて歩けるので単なる捻挫と思い込み長引くケースもあります。X線検査にて確かめ、骨折の程度により安静、弾力包帯やギプスにて治します。
図2 第5中足骨基部骨折
  2.中足骨疲労骨折
 スポーツ選手でケガの覚えがないのに足の甲に痛みが続くときは、これを疑ってみましょう。金属疲労と同様に、骨も同じ部位に何度もストレスが加わると骨折を起こしてしまいます。よく足を使うバスケットボール、バレーボール、陸上や剣道等に 多く、部位では第2第3中足骨によく起こります。X線検査や骨シンチにて確かめ、骨折があれば医師の許可が出るまでスポーツ活動は中止してください。
 予防は使いすぎに注意し休養日を作ることがまず一番です。又女性では、オーバートレーニングによる月経異常(無月経)のためホルモンの変化が生じ、骨密度が低下し骨折しやすくなるといわれています。
 
3.種子骨(しゅしこつしょうがい)障害
 ほとんどの人には母趾(足の親指)の後面に2ヶの種子骨という小さな骨があり、中足骨骨頭と関節を作り体重を支えるのに重要な役割をしています。
そこに痛みが生じたときには、ジョギングのような慢性的負荷によって起こる種子骨周囲炎や、走り幅跳び、ハードル、バスケットボール等の跳躍の繰り返しによって起こる疲労骨折と分裂種子骨を疑わなければ成りません。中でも、骨折と分裂種子骨の区別はなかなか難しく、X線検査にて確かめます。
(図3,図4)
 安静、足底板やギプスにて治しますが、軽快してもハイヒール等の前足部に負担のかかる靴を避け、スポーツ時には必ず足底板を装着し、又母趾背屈予防のテーピングを行う等の注意が必要です。
 
  4.モルトン病
 これは30〜40台の女性に多く、運動すると第3,4足指に電気が走るような痛み、時にはしびれが生じますが、靴を脱いだり安静にすると軽くなります。(図5)     
 原因は第3,4中足骨骨頭間で足指の神経がしめつけられる説が有力です。(図6)

靴を変えたり、足指の間に綿を入れたりして様子をみ、良くならないときは手術になります。
 
5.第2ケーラー病
 思春期の女性に多く、外傷の覚えなしに足趾のつけね(特に第2,3中足骨骨頭-図1参照)に、腫れ、熱感や痛みが生じます。これは骨端症という病気で原因ははっきりしませんが、「踏み込み」「蹴り」等の動作が多いバレーボール、ソフトボール、バトミントン、サッカー、陸上、体操や、卓球等のスポーツ歴のある人に多いので、くり返す小外傷による循環障害と考えられています。
 X線検査や超音波にて確かめ、まずは激しい運動を禁止し、更には荷重点が変わるような特殊な足底板(図7)をつけて治します。

6.外反母趾(がいはんぼし)
 これは母趾が第2関節で外方に曲がり、内側が突出した状態をいいます。
(図8)
 女性に多く、靴やハイヒールを履くと痛みが強くなります。
 原因は靴使用という生活の洋式化も考えられますが、他に遺伝的因子、長時間の起立・歩行
や体重による外力、扁平足等も考えられます。
 注意点としてはハイヒールや先の細い靴を避け、又足部のマッサージや体操を行って、
(図9)母趾の内側の筋肉を伸ばすようにしたり足の裏の筋力強化に努力しましょう。(図9・10)

図8 外反母趾
 
  

図9 母趾を開く運動をし、母趾内転筋の拘縮を予防する




図10 足部のアーチを引き上げる運動を   行い足の裏の筋肉(足底内在筋)   を強化する
  7.扁平足障害
 扁平足とは足の縦軸アーチの低下(土踏まずがない状態)による足の変形をいいます。
(図13参照)
 スポーツ選手の中には扁平足の人も多く、必ずしも扁平足がスポーツ障害をひき起こすとは限らないとも云われていますが、足アーチ(足底弓)の保持に関わっている骨、靱帯、筋肉や腱にいろいろ障害を起こす人も多くいます。
 扁平足の分類はいろいろありますが、スポーツ障害として一番問題になるのは思春期の扁平足かと思われます。この時期は発育に伴い、体重が増加し、又運動量も多くなるため足底部にとても負担がかかります。更には外反足(踵骨が下腿長軸に対し外方に屈曲し、内くるぶしが突出する状態)も合併することが多く、外反扁平足(図11)といわれています。人によっては横軸アーチの低下(横軸扁平足)や外反母趾変形もひき起こします。
 症状は長時間立っていると足が痛み、時には腰、大腿や下腿などの離れたところに痛みが出ることもあります。
 予防・治療としては、日頃土踏まずのある靴を選び、足の筋肉を強くする体操(図10)を行ったり、足の外側で歩く訓練、回外板を使用しての歩行訓練
(図12)や扁平足用の足底板装着が必要です。
図11 外反扁平足 内側部が突出している(矢印)  図12  足外縁で歩く訓練(左図)  回外板による歩行訓練(右図)

8.胼胝(タコ)と
鶏眼(ウオノメ)
 両方とも本質的には同じで、くり返される圧迫や摩擦によって皮膚の一部が固くなってできます。足底の場合は、ハイヒールや合わない靴を履いたり、又扁平足の人でも骨の突出部が変化し、できる位置が人によって変わります。スピール膏を貼ったりして治すことが多いですが、予防としては靴に注意し、圧痛部に圧力がかからないように工夫した中敷きを使用したり、又横軸扁平足(横軸アーチの低下)の人には中足骨パッドの使用を考えてみましょう。 


図13 足底骨突出部にかかる圧力   (縦断面)
図14 足底骨突出部にかかる圧力   (横断面)
 
足部回りのスポーツ障害・外傷は、他に比し頻度としては高く、又診断は容易でも、症状は案外改善しないケースが多いように思います。どうか自己判断されずに、早めに専門医に御相談してください。

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