図1  | 
      
       2.頚損とは 
       頚の骨は7個から出来ていて、その中に呼吸や両手、両足の運動神経や知覚神経の中枢である脊髄(頚髄)が通っています。(図1) 
      そして、頚は頭を支え両手をぶら下げる働きをしています。
       
      背骨の中で最も運動性が高くその為、頚椎の過伸展や過屈曲をきたす外力が加わりますと、その中の脊髄まで損傷する可能性があります。これを頚髄損傷(頚損)と云います。 
       損傷を受けた頚髄の高さ、部位によって呼吸麻痺、手足の麻痺、手又は足だけの麻痺等症状が異なり又その予後が異なる特徴があります。 
       | 
    
両手で頚部、前腕、 または膝で頭部を固定し、 意識障害をチェックする。  | 
      図2  | 
      
       3.スポーツ現場での頚損の診かた(表2) 
       いろいろなスポーツ現場での頚損の発生が考えられますが、今回はラグビー練習試合中にフィールドの中でドクター不在中におこったと仮定して述べてみたいと思います。 
      スクラムやタツクルの後に倒れたままのプレイヤーを発見したら、先ず第lに頭部外傷か頚損を疑って下さい。 
       指導者又はレフリーは、倒れたままのプレイヤーの頭側にしゃがみ込んで、両膝又は両手で首から頭を固定しながら意識状態をチェックして下さい。 (図2) 
       | 
    
| 頭部打撲(脳しんとうを含む)あるいは頚部損傷を疑う場合のチエック事項 (倒れているプレイヤーのそばで,倒れたままでチェックする)  | 
      |
| (1)君の名前は? (2)今日は何月,何日,何曜日か言ってごらん。 (3)今,何をしているのかわかる? (4)相手チームとグラウンドの名前を言ってごらん。 (5)目を開けたり,開じたりしてごらん。 (6)頭が痛かったり,吐き気がする? (7)(指を1本,眼前に出し)はっき りみえる? (8)手や足がしびれていない? (9)腕を曲げてごらん,伸ばしてごらん。 (10)足を曲げてごらん,伸ばしてごら ん。 (11)立って膝の屈伸を2,3回してごらん。(自力で) (12)少し(2−3m)走ってごらん。  | 
      一つの項目でもできなければ直ちに医療機関に搬送してください | 
図3 | 
      
       5.意識障害がない場合
 
 表1のチェックで意識障害がなくて、首の痛みを訴える場合は先ず頚損を疑って下さい。先ず、前述の様に頭を固定しながら両手指、肘、肩関節と順に動かさせて下さい。
 
 これが全て動かない場合、更に他の観察者に指示して両手、両上肢、胸部、腹部と順につねって痛みに対する反応をチェックして下さい。これらの痛みに対する反応が無く、更に胸式呼吸がなくて腹式呼吸をしているものは頚損です!!
 
 この場合は第4頸椎付近の脊髄の傷害であり、当然下肢の麻痺を伴なっています。(図3)
 
(第4、第5頚椎の脱臼や骨折を伴なっていることが多い)
 
これより下の部位の損傷では、両上肢の運動知覚麻痺は見られないこともあります。又、第4頚椎付近より頭側の損傷では腹式呼吸もなくなる為、直ちに人工呼吸が必要となるケースもあります。
 
 特殊なものとして両下肢に麻痺がなく両上肢のみに麻痺がおこるものや片側の上肢、下肢に運動麻痺、反対側に知覚障害がおこるものもあります。 
       | 
    

| 左右にそれぞれ3名と2名が配置し、ひざまずいて、両前腕を図のように体の下にさしこむ。 | 両側のものが、指示に従って同時に膝を立てる。つぎに、指示に従ってゆっくりと受傷者を持ち上げる。 | 
![]()  | 
    |
| 持ち上げられた受傷者の体の下に板をさしこむ。 | 板の上に静かにおろし移動する@〜Cの間、頚部を持つものは注意して、頚部が動かぬように保持しておく。 |