1.捻挫をバカにしない
一番多いスポーツ外傷は、足関節の捻挫です。軽いものでもしばらく満足にスポーツができなくなり、ひどいものでは、痛みが残ったり、運動能力が落ちてしまうことがあります。医者にいってレントゲンを撮ってもらっても「骨に異常はない」「ただの捻挫だよ」で安心して終わってはいけません。捻挫してしまったら、いかに早く、後遺症なくスポーツに復帰できるかが重要なポイントとなります。
足を内側に捻ることにより
外くるぶしの靱帯が切れ
外くるぶしのあたりが腫れて
痛む(図1)
2.どうして痛める?
ほとんどは、過度に足を内側に捻り、外くるぶしの靱帯が伸びます。音がしたときや、何かが切れた感じがしたときは重症である時が多いのです。
3.RICE(ライス)の原則(No11スポーツ中のケガの応急処置へ)
痛めたらすぐにおこなってください。あらゆるスポーツ外傷の原則であり、初期治療としてとても重要なのですが、案外行われていません。ぜひ覚えて、確実に行ってください。
R (rest) 患部安静です
I(icing) 冷却です
C (compression)圧迫です
E(elevation) 挙上です
包帯で軽く圧迫し挙上、冷却(図2)
足部を楽にし、なるべく心臓より上に足を上げます。(間欠的に)水か氷で冷やします。(低温やけどさせないように!)包帯などで軽く圧迫し、痛みが引くまで経過を見ます。
4.けがの程度をチェックする
腫れ具合、痛みの程度、足首を前後に動かして痛みはどうか、歩けるか、走れるか、などをチェックします。腫れがひどい時や、歩いても痛いときは、中等症以上です。痛みは外くるぶしの前方にあることが多いですが、それ以外の場所にもあるときは、複数の損傷がある可能性があります。軽症でなければ専門医にいくべきです。
重症度 |
損傷の程度 |
症状 |
軽症
|
靱帯が一時 |
痛みは軽い |
中等症 |
靱帯の部分 |
痛みが強い |
重症 |
靱帯の完全 |
痛みが強い |
5.治療法
軽症であれば、痛みがなくな り次第運動を開始します。
中等症のとき
約1−2週包帯・テーピングなどの軽い固定を行います。痛みがあれば、さらに固定を 1−2週続けます。 (図3・4)
痛みが強いときは、痛めた足は、使わないようにします。無理に使うとかえって復帰が遅れます。言い替えれば、痛みを見ながら動かしていき、痛ければ動かさないということです。(無理に動かせば伸びた靱帯が、ますます伸びてしまいます)
痛みが取れてくれば、足首の曲げ伸ばしを行います。最初に背屈(自分側に曲げる)から行います。
重症のとき
約2−3週間ギプスを巻き、その後は、リハビリとなります。
受傷直後の
応急処置
(図3
図3 外くるぶしにU字型のパッド
(スポ ンジなど)をあてる
図4 パッドの上から アンダーラップを巻く
RICEも行う
(図4)
手術治療を行うことは少ないですが、重症のとき行われることがあります。
動かせない間は、良い方の足や全身の筋力トレーニングを行います。
痛みがなくなればすぐ下腿筋 力トレーニングを行います。(図5・6・7)筋トレは、地味で楽しくありませんが、
復帰を早めるためにも、将来再捻挫しないためにもぜひ行ってもらいたいです。
痛くなく筋力トレーニングが 行えれば、いよいよジョギングからはじめ少しずつ走る量を増やしていき、現場復帰となります。
トレーニング開始時に痛みや 不安定感があれば伸縮テープを使ったテーピングを巻いてトレーニングを行います。(図8〜図13)
|
|
(図7)外反力のトレーニング
いずれも痛みを見ながら少しずつ強くできる様にする
(図8〜図13)筆者がトレーニング開始時に行っているテーピング(扇形スパイラル法)
アンダーラップを巻いた後1.5インチ白テープ(伸びない)でアンカーを施す。(図8)
| 内くるぶしから後方45度に伸縮テープ(伸びる茶色テープ)を外側前面に回す。 外側を強く引く (図9) | 下腿の前面でスパイラルテープを止める。(図10) 強く引っ張って止める |
2本目は、やや角度を前方にしてスパイラルテープを巻く(図11) 強く引っ張る | 3本目は、図のように内くるぶしの下から足の裏−下腿のアンカーテープまで強く引っ張って止める。 (図12) | 下腿のアンカー@・ホースシューA・前足のアンカーBを白テープで張って完成 (図13) |
6.いつまでも痛みが取れないときは?
3−4ヶ月たっても痛いときは、初期治療や、リハビリに問題があったかもしれません。しかしこの時期に安静にしても意味がありません。徹底的な下腿筋力強化を行ってください。医師の指示を仰ぎ、テーピング・装具などで様子を見ながらスポーツを始めることをおすすめします。私は、筋トレ以外に不安定板を使ったリハビリを指示しています。大変地味で退屈な訓練ですが効果があるようです。
不安定版の上で1.立位を保持、2.片足立ち、3.スクワットなどを繰り返すことで、捻挫を防ぎバランス感覚を獲得する。