@年齢との関係
野球肘の発生する年齢は、肘に成長軟骨出現する小学校高学年が最も多く中学生・高校生の順です。
A症状
投球時、投球後の疼痛が主な症状です。投げ込んでいくうちに痛みが軽くなってしまうこともあり、投球数が増えてしまう原因となっていることもあります。 痛みの部位は、2/3は内側(図1)、1/3が外側(図2)、後ろが痛む事もあります。
野球肘で痛む場所
図1 肘の内側(骨の突出している所) が2/3 |
図2 肘の外側が1/3 |
外側部の痛みは、数日で軽快する事があり、そのため早期に発見できず治療開始時にかなり悪くなっていることがあります。
B原因
ほとんどがオーバーユース(使いすぎ)です。成長期は骨軟骨や筋肉が繰り返しの刺激にたいへん弱くその上投球技術の未熟さも関係し、悪くなっていくと思われます。 図3は投球動作でどういう力が肘にかかるかを表しています。内側は引っ張りの力が起き、外側は軟骨どうしが圧迫される力が起き、さらに捻れ、剪断力(せんだんりょく)(ずれる力)も加わります。カーブを投げたときはさらにねじれの力が大きくなります。少年野球で、カーブを禁止させるのはこのためです。
外側は圧迫力が働き、
ボールを投げる時 軟骨どうしが衝突 する力が働く |
内側はボールを投げる時
軟骨に引っぱりの力が起こる |
C治療
野球肘が疑われれば、すぐレントゲン写真を撮るべきです。早期であればあるほど復帰が早くなります。
もし、レントゲン写真上に異常が認られれば、修復されるまで、投球は禁止しなければなりません。 内側の痛みであれば、3週間ほど投球を禁止し、その後痛みがなければ、軽いキャッチボールから始めます。少しでも痛みがあれば、慎重に経過観察します。各上肢の筋肉トレーニング、投げ方の指導は、基礎から覚えさせます。痛みがでなければ順次投球を開始させます。 外側の障害時は、投球だけでなく肘を使うことをいっさい禁止し、レントゲンで経過を見ます。治るまで1年以上かかることもまれでなく、本人に十分な説明をし、病気を理解した上で治療しなければ将来に影響を残すこととなります。
D投球数の目安
投球障害を予防するために、成長期のスポーツ少年には次の対策が提唱されています。
○練習量 週3回(隔日)1時間半/1日
○投球数 50球以内/1日、最高で300球以内/週
○2人以上の投手・捕手の養成
○ボールを握らせないシーズンオフの設定フォームが悪いから、肘を痛めるのだといって、投げ込んで、フォームを強制するという練習は、とんでもない考えです。
Eスポーツメディカル チェックの必要性
少年のスポーツ障害を予防するための定期検診の実施が重要といわれています。早急に体制を整備するべきだと思います。
2.テニス肘
典型的なテニス肘は、バックハンドでの肘の外側(図2)の痛みです。しかし、ハードヒッターや、サーブ・スマッシュの多用で、内側(図3)を痛めることもあります。原因は、バックハンドで伸筋腱(手首を背側に曲げる-肘の外側)フォアストローク・サーブで屈筋腱(手首を腹側に曲げる-肘の内側)が、くり返されるストレスで、痛んでいきます。(図4)
図4 腱が骨に付着している所で、損傷が起きる
テニス肘を防ぐために以下の点について述べます。
@フォームについて
未熟者と上級者は、フォームに違いがあるという研究があり、たとえば次の点が指摘されています。
・インパクト時以外に前腕によけいな力がかかっている
・上級者は体をうまく回転して 打っているが、テニス肘のある人は、体が直線的に動いて いる
・上級者は、肘は伸展位なのに 対して、テニス肘になりやすい人は、肘が屈曲している などの報告があります。
A練習量
練習量が多くなるほどテニス肘の頻度は増えています。1日2時間以上行うと危険度が増すということです。
B道具
最近のラケットは、軽量で反発力もあり進歩していますが、テニス肘の時は、以下の点に気をつける。
・ラケットは軽い方がよい
・グリップは、うまく握れる 最大の太さがよい
・ガットの張力は、ゆるい方 が肘への負担は少ない
C筋力
筋力がないとテニス肘が発生しやすくなります。テニスをプレーするだけでは、筋力アップは望めないので、別メニューで練習終了後、或いはオフの時に筋力アップを図ってください(図5)。
図5 ゴムを使った伸筋のトレーニング
やや強め(15-25回できるくらい)で、
10回くらいを1セットで3セット行う。
戻すときはゆっくりと行い、
屈筋腱(手のひらを上に向ける)も同様に行う。
Dストレッチ
練習前後のストレッチを十分行わせます(図6)。練習前のウォームアップや、練習後の肘のクーリングもかかさずに行ってください。
E治療
疼痛がでたら、局所を安静にします。症状によってバックハンドのみ禁止とするか、完全にテニスを禁止とします。レントゲンの検査などは受けておいた方がよいでしょう。
図6 伸筋のストレッチ
肘は必ず伸ばした状態で行う。
痛みがでる直前で止めて、20-30秒ほど伸ばす。
反対に屈筋腱のストレッチ(手のひら側を引っ張る)も同様に行う。
(No13もう一度ストレッチについて考えるへ)
痛みが軽減してきたら、関節のストレッチから、理学療法、筋肉トレーニングを行います。ラケットを肘が伸ばした状態で持っても痛みがなければ、素振りを開始させますが、正しいフォームであるか十分チェックしてから行わないと、肘痛の再発の原因となります。