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図3 スキー外傷の推移およびスキー用具の変換 (石打丸山スキー場診療所統計より) |
スキー外傷の中で最も多くスキー膝と言われ、ほとんどが内側の靱帯損傷です(図4)。スキーの先端が外に開いた状態で転倒し、膝を外側に捻り受傷するパターンが一番多いようです。さらにビンディングがはずれないと膝に強いねじれの力が働き重篤な靱帯損傷となることがあります。
膝内側の大腿骨側に痛みがあるときが多く、約4週から6週位のギプス固定が必要になります。完全断裂であれば、膝の腫れ動きの制限、外側への不安定性が生じ、手術治療が必要になることもあります。
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膝の腫脹が強く、関節に多量の血液が貯まっているときは前十字靱帯の損傷を疑わなければなりません。前十字靱帯はスポーツをするためには非常に重要な靱帯であり、この損傷がある人は、膝が不安定となり運動ができなくなり手術治療が必要になることがあります(図5)。
しかし前十字靱帯を損傷していても日常生活に支障がないこともあるため、診断が見逃されやすく、膝の損傷が進行してしまった例も多く見られます。
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前十字靱帯は、膝を伸ばしたとき膝が前方に脱臼するのを防ぐ働きがある 前十字靱帯が損傷していると膝に力を入れると前外方に脱臼してしまう |
スキーの転倒時、ストックのストラップ(図6 )が親指から離れず親指が外側に引っ張られると親指の付け根の内側の靱帯が伸びてしまうことがあります(図7 )。また直接雪面に親指をつき受傷することもあります。これを「ski thumb=スキーサム」といいます。この靱帯は親指で物をつかむとき重要になるので緩みがあれば手術が必要になることがあります。
転倒した後、親指の付け根がはれていたり、親指と人差し指でつまむ動作をして痛みがあるようなら専門医に受診するべきです。
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下からストラップを通して握る(lock technique 図6)で転倒するとストラップにより親指が外側に強制され受傷する |
日本に紹介されたのは1970年代後半とされていますが、90年代になり競技人口が増え、多くのスキー場で滑走可能になると、スノーボードによる外傷がスキーによる外傷の件数を上回り、障害が起こる比率もスキーの4 〜6倍という統計が出ています(図8)。 |
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図8 スノーボードとスキーの外傷の割合 | |||
図9 図10
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外傷の特徴としては骨折や脱臼などが多く、(図9)また頭部を雪面に打ちつけることによる頭蓋内出血で生命に関わることもあります。
またスキーは下肢のけがが多いのに比べて、スノーボードでは上肢に多く、手関節部での骨折や肩や肘の脱臼が多いのが対照的です(図10)。
(みんなのスポーツ医学No20参照)
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図11 図12
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スキーでは急斜面で転倒することが多く、スノーボードでは緩斜面で転倒することが多いのも特徴です(図11)。これは緩斜面では谷側のエッジが引っかかりやすくなり(いわゆる逆エッジ)そのまま前につんのめることが多いからです(図12)。ストックを使わないため衝撃を和らげることができず頭部、顔面、上肢に重傷を受けやすくなります。転倒した際の転び方をしっかりマスターすることが重要です。
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