「パワーをつけるためのスポーツ栄養学」   

1.日本人は基礎体力がない?
たいていのスポーツは、体力があるほうが有利だし、筋肉があればケガの防止にもなります。オリンピックなどを見ていると欧米人に比べて日本人の不利は否めません。しかも同じアジアの選手と比べても、日本人はパワー負けしているように思える場面がよくあります。そこで今回は体力を付けるためのトレーニング・栄養学について考えてみましょう。

2.パワーのつく食品などない?
 いかにバランスがとれた食事をとってもそれだけではデブになるだけです。重要なことは、摂取したものをいかに体に取り入れるかです。よく、これをとれば筋肉がつくとかパワーが増すなどという食品(市販ビタミン剤とかプロテイン)は、あまり期待が出来ないと思います。

3.筋肉や骨を作る
@筋肉をつける食べ方 
 ウエイトトレーニングをすると筋肉をつけるホルモンがでますが、ウエイトトレーニング後1−2時間しかでないため、そのとき十分に筋肉をつける栄養(タンパク質)があることが必要です。そのためには、食後すぐにトレーニングしたり、逆にウエイトトレーニング後すぐに食事をとるなどが有効です。(図1)
 図1 ウエイトトレーニングは,練習後の昼食前・夕食前後か寝る前 
     

図2 トレーニング後1−2時間は、
   安静が大事栄養も
   食後1−2時間で
   体に吸収される。
   リラックスして熟睡を!
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Aトレーニング後運動しない
 先ほど話したようにウエイトトレーニング後筋肉を作るホルモンがでるわけですが、このとき安静にしておくことがとても重要です。(図2)ましてや激しいウエイトトレーニング後にジョギングをしたり、野球なら守備やバッティングをするというのはトレーニングの効果を台無しにしてしまうものです。 ウエイトトレーニング後はストレッチ、マッサージ程度にして休憩をとりましょう。また週1回か2回は、完全休養日を作ることも重要です。
B睡眠で筋肉がつく       
 睡眠により、筋肉や骨を作る働きが活発になります。以上のことから、ウエイトトレーニングは夕食前後、あるいは寝る前に行い、ぐっすり寝るのが良い方法だと思います。
Cタンパク質の取り方 
 必要量をきちんと三等分して朝昼晩とるというのは、有効とは思われません。☆夕食前後にトレーニングした のなら夕食はタンパク質を多めにした食事(高タンパクで低脂肪がよい)をとる。よく1日の蛋白摂取量が問題になり、成長期には、2g/Kgそれ以外では、1.2g/Kgなどと書かれている本もありますが、そういうものではなく摂取するタイミングが大事だと思います。
4.炭水化物の取り方
☆激しくエネルギーを消耗するような運動を行った後は、高炭水化物(麺類、餅など)を十分にとる。
5.脂肪は必要か? 
 ほとんどのスポーツでは、余分な脂肪は必要ありません。しかし高エネルギーを必要とする日常トレーニングや、夏ばての防止などで脂肪食が有効なときがあります。
☆夕食では、脂肪を食べれば太る元になるので控える。☆朝食や昼食で、バターやチーズなどの乳製品や卵の脂肪は、エネルギーに分解されやすく、食後トレーニングをするのに向いています。

図3 夏ばて防止や、ハードな練習をこなすためには、分解が早い乳製品、卵を朝食に取り入れる 

豆類(納豆)と穀類(米)の組み合わせは低カロリーで良い蛋白 

 

皮なし鶏肉、白身魚は、脂肪の少ないタンパク

夕食は高タンパク低脂肪!骨は筋肉と共に夜作られるので、カルシウムは、昼食や夕食にとると良い

風呂上がりの牛乳で午後にもカルシウムを摂取 

  
6.スタミナを持続させる
 スタミナを持続させるために、グリコローディングという方法があります。これはエネルギーをより筋肉に蓄え、長時間スポーツ活動が出来るようにする方法です。これにはマラソン選手のように何日もかけて行うものと、急速に行うものがありますが、急速グリコローディング法について述べます。 この方法は、炭水化物の摂取といっしょにクエン酸をとる方法です。これはクエン酸の作用で、炭水化物の分解が防げられ、筋肉や肝臓にエネルギーの元になるグリコーゲンが蓄えられることによるものです。 具体的には、ご飯、餅やパスタなどの炭水化物食品をとった後、オレンジやオレンジジュースなどを飲む。バナナなどのでんぷん質の食事も有効で、間食や夕食にデザートとしてとるなどすると効果的です。 
 餅やパスタなどの高炭水化物をとって
 
食後に柑橘類をとればスタミナが付く(グリコローディング) 
     

バナナは、でんぷん質に富み、
すぐエネルギーになるので
朝昼晩、スポーツの合間の
エネルギー補給に適している
 
 
 
 

7.貧血を防止する食べ方  

 貧血があると、酸素を筋肉に運ぶことができず、スタミナも低下し体力の回復も遅れます。特に女性では慢性的な鉄欠乏と運動性貧血が合わさっていることもあります。鉄と、鉄を運ぶタンパクの低下が原因と考えられます。

☆夕食では低脂肪高タンパクの食事をとる。赤身の肉や魚などがよい。

☆鉄の吸収を阻害するものは夕食にとらない。特にタンニンは、強力な阻害物質なので終日コーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶などはだめ。

☆玄米ご飯や豆腐などの豆製品(フィチン酸)、ほうれん草(蓚酸)も夕食はさけた方がよい(貧血の強い人)。

☆ビタミンCやクエン酸は鉄の吸収を促進するので、夕食後 にみかんグレープフルーツ(ジュースでも良い)をとる。

☆夕食前後のウエイトトレーニングにより筋肉タンパク量を増やすことと、その後の休息も貧血の改善に重要である。
 
 
赤身の魚/牛ヒレ肉

マグロ・カツオなどの赤身の魚や、
牛ヒレ肉はタンパク・鉄を含む 
 

ビタミンCやクエン酸

グレープフルーツ
オレンジジュース
レモン
食後のデザートにとると鉄が吸収される

タンニンは強力な鉄吸収阻害剤

コーヒー 
紅茶  
ウーロン茶
緑茶
貧血には一日中とってはだめ

フィチン酸、シュウ酸

豆腐 玄米にはフィチンが含まれ鉄やカルシウムの吸収を阻害する。
ほうれん草 のえぐみ成分(シュウ酸)は、鉄やカルシウムの吸収を妨げる。
シュウ酸は水に溶けるのでさっとゆでて水にさらしておくと良い。


 

                            
トレーニング後リラックスも大事
 

8.試合前日、当日の食事
 試合前のコンデショニングのために食事は重要です。食べ過ぎは禁物だし、試合中にスタミナ切れも困ったものです。注意点を述べてみます。

試合前日
☆試合前に適当にトレーニングをしてぐっすり寝られるようにある程度疲労しておく。

☆夕食に炭水化物をしっかりとり、柑橘類をデザートにとる。食後に甘いものやバナナを食 べてエネルギーを蓄積させる。

試合当日
☆食事に合わせて早起きする。試合開始3時間前には朝食を済ませる。

☆炭水化物は、腹持ちの良いものを選ぶ。パンよりご飯の方がよい。餅も良い炭水化物である。

☆脂肪は、チーズやバターのような消化の早い乳製品がよい。

☆朝食の後のオレンジジュースなどの柑橘類も忘れずにとり、グリコローディングを行う。
  
  No19 正しいスポーツトレーニングと栄養学

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