いつ運動を始めたらよいか
 
 
1.子供の能力を最大に生かす よく世界のトッププレイヤーの逸話として、3歳の時からラケットを握っていたとか、1歳でもう泳いでいたとかいう話を聞きます。また逆にリトルリーグ時代には有名な選手だったが、プロになってもぱっとしなかった選手の話も聞きます。 はたして子供の能力を最大に伸ばすためには、どういう時期にどんな運動をすればよいのでしょうか。

2.体の発達を考える
  (図1)は、どの年齢にいちばん運動能力や、体力が向上するか表しています。まだ未熟なときに行っても効果がないばかりか、障害を起こす可能性があります。逆によく発達しているときに運動を行えば効果的であるともいえます。 
  

図1 それぞれの能力がいちばん発達する時期を表している
 

3.幼児から小学生に適した運動
 乳幼児では、脳・神経系の発達が盛んで、この時期にすでに大人に近いレベルに達します。神経の発達というのは、大脳皮質−運動神経−筋肉の活動−動作の習得という関係で、(図1)のごとく7,8歳でピークに達します。
 よく”三つ子のたましい百まで”などというようにこの時期に習得した動作は忘れないものです。スポーツにおける動きを見ると、走る、蹴る、投げる、打つ、跳ぶ、泳ぐなどの動作が基本となっています。この時期には、遊びや、運動を通じて、これらの動きをいかに多く体験をさせるかが大事です。 敏捷性や、ケガの退避などもこの時期に習得します。最近の子は、ケガに弱いとかすぐ落ちたり転んだりするといわれていますが、昔は遊びを通して危険を回避することを覚えたものです。今はそういう遊びが足りないのかもしれません。
  整形外科スポーツ医からは、スポーツ少年団などの活動プログラムで、マット運動、安全な倒れ方や転び方、受け身動作、一輪車などの運動を補助的に行うことを勧めています。 
  少人数室内で遊び、運動はやはり室内のスイミングスクールだけでは、健全な子供に発達しないと指摘している先生がいます。

室内で少人数遊ぶのはだめ! 多くの友達と野外で遊ぼう!!
 

   あまりわが子が器用なので、大選手になるに違いないと錯覚を起こし、やたらに専門的な運動をさせてしまうのは疑問です。なぜなら、筋肉・骨や精神力も発達していないので体がこわれてしまいます。 また、この時期に修得したフォームをあとで大人が無理に修正しだめになった例もあり、この時期に修得した動作がいかに重要性であるかということです小児スポーツ医の先生は、次のような注意を呼びかけています。

@個々の子供の発達を考慮し、発達にあった指導を行う。

A特定な種目・技術を習得することはしない。

B不用意な個人の相対的評価を 行わない。

C子供がいやがるような行動や指導は行わない。

D繰り返し十分なメディカルチェックを受けて行う。

 子供が痛みを訴えているのは、体が何らかの警報を発していると考え慎重に扱わなければなりません。  

4.中学生(12歳から16歳くらいでの運動)
 12歳くらいから心臓や肺などの呼吸循環機能が発達してきます。これは、ねばり強さとなって現れます。(図1)16歳くらいで、筋量もほぼ大人と同じになります。しかしいちばんスポーツ障害が起こりやすい時期でもあります。これは
@まだ骨に、成長軟骨が残って いて繰り返しの動作や、強い 負荷に耐えられない。

A中学生位では、成長に個人差 があり、同じ練習メニューで は、発達段階が遅いものは、 障害が発生しやすくなる。(特に団体競技)

B勝利至上主義(早すぎる専門 化練習量の多さ、非科学的なメニュー)

C基礎的な体力の不足 などがあげられます。

 骨の成長はほとんど成長軟骨で行われます。上肢は、肩で伸びる割合が多く、下肢では、膝で伸びる割合が多いので、成長期にここを痛めると成長障害が起きることがあるということです。また図2のように成長軟骨が残っていると、成長軟骨で骨折がおきることが多くなります。
 

図2 成長期におこりやすい骨折

 成長期の骨端(正常)            骨端線の離開

 骨折と骨端線の離解            成長軟骨の骨折

   暦年齢と骨年齢が一番違う時期でもあります。16歳だからといっても骨格は、12歳くらいの人もあるし、逆もあるわけで、個別メニューによるトレーニングが必要になるわけです。
同じ年齢でも骨年齢は大人と子供ほど違う
 

  成長期にはいると骨の成長が活発で、筋肉の成長が追いつけずいろいろな病気がおきるので、ストレッチが重要です。実際病院に来る少年たちのケガのかなりは、ストレッチだけで、予防できるという事実があります。 また各種の運動能力は、生まれつき決まっているものがあるので、その能力を伸ばすことも大事と述べています。たとえば筋肉には遅い筋肉と早い筋肉がありますが、この筋肉の比率は生まれつき決まっているので、遅い筋肉の多い人は、短距離には向いていません。100m走のトップランナーはほとんど黒人選手が多いのもこのせいです。マラソンランナーの瀬古選手は、天性の心肺能力を持っていたそうです。 でも事前に知る方法はありませんから多くのスポーツを遊びとして経験させ自分の好きな道を選ぶのがよいと思います。

  
めざせ・・・の星は時代遅れ? 

5.身体が発達した頃 このころになると筋肉を作る様々なホルモンも活発に出るため積極的な筋肉トレーニングが必要です。個々のスポーツで使う筋肉だけでなく、総合的な筋力アップ(No5筋肉のバランスを考える)と柔軟性の獲得(No5ストレッチの方法)がけがを予防し、個々のスポーツのパフォーマンスを向上させます。

  
足趾の外転運動   足底筋の訓練

足部の筋力強化は、ケガの防止となる
日常的に、このようなケガを防ぐトレーニングをメニューに入れてほしい

  いくら身体が成熟したからといっても過度の練習はオーバーユースにつながり、パフォーマンスの低下につながるので指導者は、練習内容を個人個人できめ細かくチェックする必要があると思います。


ケガを負ってしまったらトップになるのは難しい
障害なくスポーツを続けられたものが栄光を勝ち取る!   
 

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