「こわれない肩をつくる!」

  ほとんどのスポーツは、肩を使います。特に投げる動作は、野球、水泳のクロールやバタフライ、バレーボールのアタック、テニスのサービスなど多くのスポーツでおこない、痛める頻度が多い場所です。肩を痛めると背部痛→肘痛→腰痛と、どんどん悪い場所が増えていくことがよくあり、とても大事な関節といえます
1.肩の動きをみる。
肩は、図1のように腱板(けんばん)という小さい筋肉と三角筋などの大きい筋肉の筋群からできています。図2のようにうまく一緒に働くことによりいろいろな動きができます。これらの一つでもうまく働かないと、ケガが起きやすい状態になります。
2.肩のケガを防ぐためには? 
基本的には柔軟性、バランスのとれた筋力、スキル(技)を身につけることです。 特に、肩をよく使う種目や、生まれつき関節がよく動く人(たとえば、指が反対にそってしまうような人)は、肩が不安定になりやすく、肩をきたえる必要があります。

 腱板は重要な肩の筋肉  他の筋肉といっしょに協調して働く

3.筋トレの意味は、
 速くて強いボールを投げるためにおこなうのではありません。むしろ速いボールを投げるピッチャーはあまり筋肉に頼っていないという話もあります。あくまでも肩を守るためにバランスよく全身の筋力をつけることで肩に負担をかけないことです。そのためには後述するように下半身の柔軟性と体幹の筋力アップが重要になります。

4.柔軟性をつける
 特に水泳、野球などでは、肩の硬い選手に障害が多いようです。運動前の肩のストレッチは忘れてはなりませんが、日頃から十分に柔軟性を獲得しておくべきです。

図3運動前後のストレッチはゆっくり時間をかけて(一つの筋肉について20-30秒)おこなうように。

後方のストレッチ
肘を反体側の肩の方へ引っ張る
下方のストレッチ
側方のストレッチ 前面のストレッチ
延ばしたい側の肘を後方に引っ張る

肩胛帯が固いと内在筋を痛めやすくします。これも別メニューで日頃から可動域を大きくするトレーニングを行ってください。

上肢を上方に持ち上げる。イメージは肩胛骨を持っていくイメージ。ゆっくり持ち上げ一呼吸置いて
ゆっくり戻す。5〜10回
肘をつけて上肢を開く。イメージは肩胛骨が外に開くイメージ。ゆっくり開いて一呼吸置いて
ゆっくり戻す。5〜10回

肩に一番重要なのは腰が回ること!
では腰の回転とはどこが回るのでしょうか?

左図は脊柱の回旋する角度を表しています。脊柱は全部で90度回るのですが
頸椎(首)が50度 胸椎(背中)が35度 
腰椎(腰)が5度 腰椎は5つありますから
一つ1度、これはほとんど関節のゆるみです。
つまり腰椎は回旋しない関節なのです。腰椎が回れば”腰をひねる”です。

では腰の回転とはどこが回っているかというと、骨盤から下なのです。股関節の内外旋
が回転中心となりますが、きれいに股関節が回るためには、膝・足の関節もきれいに
動かなければなりません。


有名な話に、野球の投手が、足を捻挫してテーピングして投球したら、肩を痛めたという
話があります。まさに投球というのは足から含めた
運動連鎖なのです。

腰がきれいに回るために
下半身の柔軟性の獲得
体幹筋力の強化が需要です。(あとでリンクします)




5.筋力トレーニング 
週2回ぐらいは行いたいものです。特に強い肩=腱板の強化と言ってよいほど腱板のトレーニングが重要ですが、実際行っている所は少ないようです。腱板のトレ−ニングを行うように指導させてほしいものです。

@肩の内旋 外旋の運動。
 ◇腱板のトレーニング 
 0.5Kg〜1.5Kgの負荷でいろいろな角度でおこなう。(図4・5)

(図4)肩の外旋 (図5)肩の内旋 (いずれも20回位を1セットとする)
伸縮性のとんだゴムで行っても良い。 1セット20から40回位
で2−3セット(図6)
ラッテクスゴムの片方を固定し、ゆっくり正確に引っ張る 

 私は、内在筋(腱板)のトレーニングは、水の負荷で十分だと思っています。お風呂の中で内旋・外旋(図4−6)
肩の外旋(図7)を行っています。

A肩の外転運動 
◇腱板のトレーニング  
 ゴムまたは1-1.5Kgの負荷で、側方に持ち上げます。(図7) 
B広背筋、小円筋、大円筋をきたえる。(図8) 
◇片手と片膝は、ベンチの上に固定します。  
◇背中の筋肉を緊張させながら、肘を屈曲して上方に引き上げます。 
◇15回から25回位できる強さを目安に1セットとします。広背筋は特に重要な筋 肉です。あらゆる動作に関係してきます。 
◇プルアップ  自分の体重を利用して鉄棒を後頭部に引きつけます。(図9) 
▽あごの方を引きつければチンアップになります
 C上腕3頭筋をきたえる。  (図10) 
◇ゴムを使ったトレーニング  肘を固定しておこなうこと。 
◇ベンチプレス・ダンベルを使ってもよいです。 
◇15回から25回位できる強さを1セットと目安にします。

水平以上には上げないこと 肩胛骨を後方に引く 肩胛骨の自重を使った引き下げ 上腕三頭筋のトレーニング

肩を痛めているときは外在筋(図8、9、10は、行わない方がよいでしょう)

                                        
☆筋トレをおこなった後、バランスをくずしてないか、フォームのチェックをおこなうこと。
6.フォームについて
 詳しくは、コーチや経験者によく指導してもらってください。 投球についてのチェックポイントとしては、肩の入った状態での位置(図11)の確認(その時の姿勢がうまくできるか。その姿勢で痛みがないか、手のひらが後ろを向いているかなど)や、下半身が硬く上半身が、上下に動いてないかなどがチェックポイントとなります。
 背中を傾け、左足を踏み出しその足元にボールを投げる指導を行う(真下投げ=めんこを想像してください)と自然なフォームが身に付くということです。 体幹が回転すれば自然に上肢が回るという感覚です。

紙くず(スポンジボール)の真下投げ

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  • 踏み込む足先の位置は、投げる方向に向く (ピッチャーならホームへ)足先が利き手に向けば体 は回らなくなり反対に向けば体が開いてしまう(下図の@)
  • 利き手の手のひらは真上(投げ終われば後)
  • 反対側の手の位置に注意すること(体幹と平行で利き手と対照−どちらも回外)これは体幹がしっかり回りやすくするため (下図A)
  • 上肢はコンパクトな方がモーメントが少なく肘肩に負担が少ない(下図B手は耳の後ろ)
  • 利き手の肩は体幹と平行(上肢が体幹より後方に引 かない(下図C)
  • 上肢には、力が入らない(水銀体温計を元の位置に 戻すとき振るイメージ)投げる推進力は踏み込みと 体幹の回転力を意識させる(下半身の柔らかさと体 幹筋力が重要)(下図D)
  • マスターすれば紙くずを前方に投げる(手のひらは センターに・投げ終われば3塁に、すでに手投げに はなっていないはずです)
  • 投球開始 最初は、山なりで少しずつ距離を伸ばしてゆく
    投球フォームは何度でもチェックし、少しでも肘・肩に違和感があれば投球中止し、 前段階(全身のストレッチ・下半身の強化)に戻る







7.肩の痛みを感じたら
 肩の痛みは、長引くことが多く、放置しておくと、肘や腰など他の部分も痛めることがあり、わずかな違和感・不安定感でも感じたら、早めに専門医に行き適切なアドバイスを得ることが大事です。一度肩を壊してしまうと復帰がとても困難になるため早期に原因を解明し治療することです。

      






図11 いわゆる肩の入った状態
   (ボールを投げるとき手が最も後ろにある状態)

上肢を後ろに引くとき、体幹の回転と同時に引くこと
(上肢だけ後方に引かないこと)
 
             









8.そのほかの留意点
全身のトレーニング(特に下半身)、運動前のストレッチ、ウォームアップを行うことはいうまでもありません。使った肩のアイシング(約5〜15分)やストレッチも十分おこなって下さい。 水泳などでは、練習量が多すぎて障害が起こることがあり、自分にあった練習量を設定することが重要です。投球肩も投げる量が問題となります。たくさん投げれば強くなるというのは大きな間違いです。 (投球数-No10野球肘とテニス肘へ)                 


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